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フリー戦略の特徴と事例、中小企業での活用のためのヒント

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キングコングの西野さんが「お金の奴隷解放宣言」という絵本のコンテンツを無料で提供するという話が大きな話題になっています。
炎上商法という声もありますが、7年〜8年前に話題になった「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」という本に書かれていたマーケティング戦略に似ていると思い、今回は改めて関連書籍を読んだり、事例を考えてみたりしたので、まとめてみます。

フリー戦略は4つに分類できる

フリー戦略とは何かという部分からですが、フリー戦略は4つに分類できるとされています。
その4つとは、①直接的内部相互補助、②三者間市場、③フリーミアム、④非貨幣市場、です。

数年前に日本語訳されたフリーの本(下)を読みましたが、


今回はさすがに読み直す気にはなれず、2010年3月13日付けの週刊ダイヤモンド(下)にフリーのまとめが載っていたので、改めて買い直して読み直しました。

①直接的内部相互補助とは?

あるモノやサービスを売るために、他のモノやサービスを無料にする方法。
おまけの概念にも近い方法です。
スーパーの試食や以前あった携帯電話の本体ゼロ円などが代表例です。

②三者間市場

広告モデルが有名で、テレビが無料で見られる理由は、コマーシャルという形で広告を出しているからです。
テレビ局は、視聴者からはお金をもらっていません。
コマーシャルを出すスポンサー=第三者が存在することでお金が発生するモデルが三者間市場です。

③フリーミアム

あるモノやサービスをフリーで提供し、更にその上のプレミアム商品を有料で提供する形態をフリーミアムといいます。
フリーからプレミアムに変わることで、フリー+プレミアム=フリーミアムというのがフリーミアムの由来です。
フリーとはいえ、プレミアム機能がいらない人は無料のままフリープランを使い続けられるのも特徴です。
DropboxやevernoteなどのWEBサービスが代表的で、5%の有料会員がいれば95%の無料会員を支えられるだけの収益があがるといわれています。

④非貨幣市場

人が何かをやる動機は金銭だけではありません。
社会貢献や世間からの注目、評判を得るためなど多種多様です。
そのため、フリー(無料)でもコンテンツを作ることができ、フリー(無料)で消費者に提供できる形が非貨幣市場です。
AmazonのレビューやWikipediaなどがこれに該当します。

フリー戦略の事例

世の中には多くのフリー戦略が溢れていますが、有名な事例としては以下のものがあります。

Evernote、Dropboxなど

無料で使えます。
容量や機能を増やしたければ有料プランを購入してくださいという戦略です。

ここで大切なのは、無料プランの機能を制限しすぎると、有料プランを買いたいと思うほどサービスを使い込んでくれないこと、そして無料プランに機能を詰め込み過ぎると有料プランにしなくてもいいやと思われてしまうことです。

Google、Youtubeなど

基本はGoogleアドセンスやGoogleアドワーズによる広告収入です。
検索機能や、メール、カレンダー、YouTubeの視聴など、基本的には無料でかなりの機能が使えます。
それにより利用者を増やし、広告の効果を高めています。

一部、企業向けのGoogleAppsに代表されるようなプレミアムプランのようなものも存在します。

しかし2009年12月期のGoogleの決算発表によれば、大きな枠組みでの広告収入が97%を占め、有料課金モデルのサービスは売上の3%程度でした。

Microsoft

Microsoftはソフトの不正コピーの取り締まりを徹底していましたが、あるときに方向転換しています。
不正コピーは取り締まりをしても、しても、湧き出るように現れ、取り締まるコストや不正防止のためのコストが無視できなくなってきたからです。

そこで、方向を変え、不正コピーをするなら自社製品をという方針にしたところ、現在では、不正コピーを使用していたが本物が欲しくなり買いにくる人が増えた上に、不正防止や取締コストがさがり、結果的に良い方向に向かったという事例もあります。

ゲーム業界

オンラインゲームなどを中心にゲームを購入するスタイルから、プレイは無料でできるスタイルのゲームが増えています。
ゲームをしていくうちにゲームに夢中になり、アイテムが欲しくなり購入するパターンが増えています。
また、ガチャに代表されるようなモデルもフリー戦略の亜種といえます。

無料相談

私もそうですが、無料相談や期間限定の低価格お試しプランなども、フリー戦略の1つです。(直接的内部相互補助)
気に入ってくれれば購入につながりますし、気に入らなければそれでおしまいです。

ブラックジャックによろしく

こちらのマンガもフリーで提供されていて、商用利用やパロディを含む二次利用も可能とされています。
その詳細と結果は『「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化1年後報告』にまとまっていますので、ここではあえて書きませんので、ご興味ある方は読んでみてください。

キングコング西野さん

あくまで私の分析ですが、
お金の奴隷解放宣言による共感や反感を呼ぶことによる非貨幣市場に対するアプローチと、コンテンツ無料公開による認知度を増やすことで絵本の購入を促すフリーミアムのアプローチが狙いでしょう。(炎上商法については割愛)

コンテンツに広告を入れれば第三者市場によるアプローチもできますし、これだけ有名になれば他のアプローチもしやすくなるはずです。

フリー戦略の基本はまず市場を、それからマネタイズを

フリー戦略を実行している多くのモノやサービスに共通しているのは、まず無料にすることで、知名度をあげ市場で使ってもらうことにあります。
儲けは後です。
場合によっては、設け方を考えてなく、後からとってつけたようにマネタイズするケースもあるそうです。

フリー戦略の大御所ともいえるGoogleですが、有名な基本的な考え方は、「この製品を開発して販売したらいくら儲かるのか?」という一般の企業の考え方ではなく、「この技術は社会の役に立てるのか?」という発想からスタートするそうです。
ですので、ユーザーが望むモノやサービスは、次々に無料で出てきます。

また、今や広告モデルになりましたが、2010年時点ではYouTubeはどうマネタイズするかが注目されていて、4つに大別できない新しいFree戦略がでるのではと期待されていました(週刊ダイヤモンドより)

当時はYouTuberなど現れるとは考えられていませんでしたが、今や一般人でも有名人になれるインフラの1つとなっています。
まさにフリーのもたらす1つの効果です。

このように、広げるのが先、マネタイズが後というのがフリー戦略の基本的な考え方です。

これは私たちのような職業が特にそうですが、形がなくてお客様にわかりづらいものの場合、無料体験や無料相談などのフリー戦略は効果を発揮します。

世間に広めるという意味合いがなくとも、特定のお客様に商品やサービスの価値をしってもらうために無料にしたり、期間限定の低価格での提供などをすると、実際の定価での購入や引き続きの利用が増えています。

フリーは万能な戦略ではない

当然のことですが、フリー戦略をとって失敗した事例もたくさんあります。

前述のYouTubeも実はその1つで、元々はGoogleではない会社が開発と運用をしていました。
月額100万ドル程度の回線コストがかかる中、どういう方法で収益をあげていくかが注目されていましたが、最終的にはGoogleに買収される形でバイアウトしました。

また、話題になったのはTwitter。
利用者は無料で使えるため、爆発的に増えたものの、その後FacebookやInstagramなどの後発のSNSに利用者がうつり成長率も鈍化。
広告収入が基本モデルですが、うまくいっているとは言い難い状況です。

アメリカでは、利用者を増やし、世間での知名度があがれば、バイアウトという方法がありますが、日本では一般的ではありません。

また、中小企業ができるレベルのフリーでは、バイアウトで初期投資分を回収できるほどの、利用者も知名度も獲得することは難しいのが現実です。
明確な定義は別として、スタートアップ企業やベンチャー企業のように、資金調達を繰り返しながら一定期間は赤字でも利用者と知名度を獲得することを目的に運営できる場合は別ですが・・・
それで成功した事例は、クックパッドやメルカリなどがあげられるでしょう。

フリー戦略で失敗しないために

前述のように資金調達を外部から行い、挑戦する姿勢の会社は別ですが、一般的な中小企業ができるフリー戦略には大切なことがあります。

それは、限界コストが無視できるほど安いことです。
限界コストとは限界費用とも呼ばれ、それをすることにより直接かかるコストをいい、厳密な概念は別として変動費ともいいます。

逆の言い回しをすれば、スタッフの人件費や事務所の家賃などは、それをしてもしなくてもかかる固定費ですので、限界コストには入りません。

例えば私たちのサービスの場合、主にかかる限界コストは移動のための交通費のみ。
だからこそフリー戦略ができます。

しかし、1回の無料相談が外注する必要や、商品を作るためにコストが必要な場合には、結果的に無料相談はやりにくくなります。

もちろん時間=コスト、人件費=コストという考え方もありますが、最低条件として限界コストが無視できるほど安いことが必要で、その後、かける時間や労力が少ないことが必要となります。

フリーに勝つ方法とは?

よくフリーでものを提供されて市場が壊されたとか、値切られるのは失礼だという人がいます。
それはその通りだと思います。

しかし、全員にそれを伝え、適正な価格でモノやサービスを提供しろというのは無理な話です。

コントロールできないものに目を向けてヤキモキするより、自分でコントロールできることに目をむけないと経営はやっていけません。

値切られるのも、低コストサービスと御社のサービスの違いをお客様が理解しないのもすべて、自分たちが価値をしっかり伝えられていない責任と考える以外にありません。

無料で提供されているのに、有料で購入するものはありませんか?

例えば、カフェで勉強や仕事をしようとするとき、ファミレスであればドリンクバーで飲み放題なのに、わざわざスタバなどの少し高級なカフェにいってコーヒーを飲む心理などが、その代表例です。
もっといえば、家でインスタントコーヒーを入れればもっと安くすみます。

しかし、カフェにいく理由があるはずです。

週刊ダイヤモンドには、

フリーに勝つためには、それよりよいもの、違うものを提供すればよいだけの話だ。

とあります。

そのためには、良いものだという価値を明確にし、お客様に理解して頂ける形で伝えていく必要があります。

中小企業は大手と同じ土俵で安売り合戦をしても絶対に勝てません。
市場の選択、商品サービスの戦略を含めて、自社より規模の大きい会社と真っ向から勝負しなくて良い体制をつくることこそ第一で、それこそが経営者の仕事です。
そこにフリー戦略をうまく絡めれば、知名度や利用者も増え、経営はうまくいくようになるでしょう。

FREE

編集後記

冒頭にも書きましたが、キングコング西野さんの「お金の奴隷解放宣言」というのを読んで、昔読んだフリーという本が気になったのがキッカケです。

以前にアメブロに、「情報はタダ(無料)じゃない」という言葉に感じる3つの違和感という記事も書きましたが、情報は当たり前のようにタダだと思われるのは困りますが、活用の仕方だと思います。

にも関わらず、なぜか批判がもの凄くあるのに今回は疑問を思い、フリーについて調べてみて、少しでも多くの方に知ってもらって、かつ、経営に活かしてもらえたらと思いブログで発信することにしました。

これだって1円の特にもなるわけではないので、フリーといえばフリーです笑。
もちろんこれで知ってもらえてお問い合わせしていただく方がいればそれが一番ですが笑。

今年は月に2回程度こんな内容でブログを書き、少しだけでも誰かのお役に立てたらと思っています。

一方で、無料が溢れ過ぎていることに対して、年末に「タダではなくお金を払って付加価値を買うという意識」という記事を書こうとしていましたが、断念していましたので、来月以降に更新します。

タダではなくお金を払って付加価値を買うという意識

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