経営に関すること

中小企業の価格競争参入は間違い?フロントエンドとバックエンドの使い方。

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1,000円のものを1,000個売って100万円の売上を達成するのと、10万円のものを10個売って100万円の売上を達成するのではどちらが簡単か?
この類の質問はよくあります。

この答えを聞いて一方の商品やサービスだけを取り扱うのも大きな間違いです。
どちらが簡単か?という質問であり、どちらが正解か?という質問ではないからです。
フロントエンド商品(又はサービス)とバックエンド商品(又はサービス)の両方を用意し、どちらの商品(又はサービス)も取り扱うことこそ中小企業の活路になります。

同じ売上がほしいなら高単価商品のほうが簡単

上記の質問の答えは10万円のものを10個売るほうが簡単というのが答えです。
金持ち父さん貧乏父さんから学ぶ経営ステージとその悩みという記事でも書きましたが、事業者の最初のステージでの悩みは売上です。

一説では、1年以内に廃業する会社が約3割、3年以内が約5割、5年後が約7割などと言われております。
(日経新聞の調査では1年後に4割、5年後が8.5割などとも言われ、統計データによって異なっています。)

その多くの会社は売上が上がらず、結果利益が出ずに潰れていきます。

そしてその多くが、お客様の数を集めることができないことが原因です。

1,000円のランチを1,000人に売るより、10万円の貴金属を10人に売るほうが簡単に思えませんか?

もう少し極端にすると100円のボールペンを1万人に売るのと、100万円の宝石を1人に売るのであれば100万円の宝石を買ってくれそうな人を1人見つけるほうが簡単です。

中小企業が価格競争するのは間違い?

更に簡単な方法は安売りすることです。
100円で他のところで売っているボールペンを50円にして売るのは、100円で1万人に売るより簡単そうです。

100万円の価値がある宝石を50万円にして売れば、100万円で売るより簡単です。

安売り、値引きは最も簡単な販売戦略

「値決めは経営」という稲盛和夫氏の言葉もあるように価格決定は立派な戦略です。
そして、その中で一番かんたんなのが安売りや値引きです。

現実では、価格自体に価値を感じる方も多いので、安すぎて不安とか、安いから偽物ではないかという疑惑が生まれるので、一概に安ければ売れるということでもありませんが、

10%セールとか1万円キャッシュバックとか、実質値引きや安売りをすることで、定価で販売するより難易度が低くなります。

大手がやっている在庫一掃セールや季節限定キャンペーンなどは立派な戦略でそれなりに効果のあるものとなります。
だからこそ大手企業がやり続けているわけですね。

中小企業に価格競争する体力はない

一見簡単な方法である安売りや値引きですが、中小企業には難しいのが現実です。

例えば、90円で仕入れて100円で売る商品があるとします。
10,000個販売できる会社であれば、仕入が90万円(90円×10,000個)、売上が100万円(100円×10,000個)、利益が10万円となります。

一方で500個しか販売できない会社であれば、仕入が4.5万円(90円×500個)、売上が5万円(100円×500個)、利益が5,000円です。

つまり大手がキャッシュバックで出せる金額は最大10万円ですが、二番目のパターンでは5,000円となります。

また、大手は販売価格を91円にしても、売上が91万円、仕入が90万円で、利益が1万円と二番目の企業が定価で売ったときよりも利益がでることになります。

※わかりやすくするために、人件費などの固定費、仕入れ値以外の経費は省略しています。

また、企業規模が大きく財務に余裕がある会社であれば、

○一時的に赤字でも余裕資金で補填できるため、相手が根をあげるまで赤字になる額でも安売りし続けられる(上記の例でいえば仕入れ値の90円以下で売ることも可能)

○大量販売をするため仕入れ値の値引き交渉ができるため、販売価格を90円以下に抑えても利益がでる体制を作れる

○業務効率化のための高額な初期投資ができる、設備の購入、広告などの販促、ツールの導入による人件費の削減、一部の機械化など

○販売先が多く他で利益を出せているため、競争相手がいるところだけ赤字覚悟の値引きをすることが可能

競合する企業の事業規模や財務状況にはもちろんよりますが、中小企業が大企業相手に価格競争をしていては、勝ちづらいことが容易にわかります。

価格以外の付加価値で差別化を!

にも関わらず、安易に安売りをしてしまう中小企業が多いのはなぜでしょうか?

価格がわかりやすく、簡単な差別化だからです。

同じ商品を扱っていたり、同じ内容のサービスであれば、多くの人が安いものを買います。
場合によっては多少の違いがあっても安いほうを選ぶ人が多いのが現実です。

高くても買ってもらうために何をするか?
これが中小企業にとって最も大切なことで、安易に価格を下げるという方法をとると、そのときは成功しても、価格を下げる以外に競争に勝つための方法を考えられない企業体質になってしまいます。

なぜなら他社より安くすることは簡単ですが、他社を研究し、お客様のニーズを考えたり、リサーチしたりして何が自社が他社に勝る部分で差別化できるところなのかを見出すことは、本当に大変で労力もかかることだからです。

また新たな付加価値を作ろうとすればもっと大変です。

なので、その考えたり工夫したり試行錯誤したりすることを避けてしまう企業が世の中には多くなってしまっていますが、失敗しても価格競争をせずに競争で優位に経つための方法を考え試行錯誤するという習慣を持つことが中小企業には必要です。

そしてそれがノウハウになり、一朝一夕では真似されない強い企業体質を作ることになります。

ぜひ差別化のヒントにこの記事も参考にしてみてください。
【VOL122】中小企業の経営に最低限必要なマーケティングの基礎

また、この本はお薦めです。
差別化の方法だけではなく、他社に真似されないための考え方の原則が載っています。
原理原則の本なので、一時的にしか通用しないテクニック的なことや事例などはほとんどありませんが、考え方の参考には非常になります。

安売りは必ずしも悪ではない!

今までと言っていることが違うように思われるかもしれませんが、戦略的な安売りは悪ではありません。

では、安売りを戦略的に使うというのはどういうことかというと、市場のシェアを増やすためや、新規のお客様を増やすための安売りです。

メインの商品を安売りするのは、NGですが、体験や試供品などを安くするのは問題ありません。

これは、新規のお客様を増やすのと、一度購入していただいたお客様に再度購入していただくのでは、かかる費用も難易度も7倍違うと言われているからです。

つまり、新規のお客様を赤字でも増やすことができれば、再度購入していただくことは難しくないからです。

最初の事例ですが、宝石を100万円で1人に買ってもらったとして、別の良い宝石が手に入ったときに声をかけられるのは1人ですが、シャーペンを100円で1万人に販売できていれば、今度はボールペンを1万人にお勧めできるからです。

江戸時代の商人たちが、火事のときに商品やお金ではなく、顧客名簿を真っ先に持って逃げたという話は有名です。
お客様の購入履歴のわかる書類があれば、改めて商品を買い直して、また同じお客様に商品をお勧めすれば再購入していただける確率が高く、一文無しになっても顧客名簿さえあればやり直すことが可能だったからです。

フロントエンドとバックエンド

フロントエンドとバックエンドという言葉を聞いたことはあるでしょうか?

フロントエンドとは、最初に低価格(場合によっては無料)で買いやすくする商品で、バックエンドとは最後に本当に売りたい商品で会社に利益がでる商品です。

なので、「フロント=前」と「バック=後ろ」という言葉が使われています。

中小企業も、このフロントエンド商品とバックエンド商品を上手に用意していくことが重要です。

つまりフロントエンドは顧客名簿の数を増やすのが目的で、バックエンドが利益を獲得する商品ということです。

Googleの事例

よくGoogleの事例をお話するのですが、Googleは本当に面白い会社です。
「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです。」
と掲げています。

しかし、検索システムは利用料無料の1円も価値を産んでいません。

またその他にもGmailやGoogleカレンダーやGoogle Mapsなど無料で使える便利なツールが盛りだくさんです。
(私も大変お世話になっています。)

無料で使ってもらうことで、ビックデータとしての情報を大量に収集できるという部分と、無料のGoogleアカウントを作らないと利用できないものばかりなので、連絡先としてのリストが手に入ります。

つまり、このあたりの無料のものがフロントエンドになります。

一方で何が利益を出しているバックエンドかといえば、
WEB上の広告(Google AdWords)や、GmailやGoogleカレンダーの無料版のアップグレード版である、Google Appsなどになります。

Google AppsはFree戦略ともいえます。
中小企業でフロントエンド、バックエンドを意識しているいないかはともかく、きちんとフロントエンド、バックエンド戦略をできている多くない企業でも、このFree戦略が種となっています。

詳しくは、フリー戦略の特徴と事例、中小企業での活用のためのヒントを参考にしていただけたらと思います。

簡単に説明すると、
Googleカレンダーを無料で使えますよ〜!
もっと便利にしたければお金払ってアップグレードしてね!
というあたりがfree戦略です。

無料相談からの有料コンサルなども、free戦略の一部といえます。

数が多いことは良いことだ!戦略

一方で、数が多いことは良いことだ!戦略というのもあります。(←勝手に名付けました。)
Googleで言えば、検索システムが無料、だから使う人も増える、GoogleカレンダーやGmail、Google Mapsも便利で無料だから使う人が増える、そこから集めたビックデータで使えるものも、使命である「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」ために検索システムの向上に利用する、だからより検索システムがより便利になり利用者が増えるという法則です。

結果的に他の検索システム(正しくは検索エンジン)を圧倒的に突き放してGoogleが圧倒的なシェアを誇っています。
(参考までにYahoo!はGoogleの検索エンジンを利用しています。)

Googleの検索システムだけの価値ではなく、無料で提供しているGmailなどの他のサービスとの互換性も強みといえます。

そして、もっとも大切なのは、検索システムの利用者が増えれば、バックエンドであるWEB広告を見る人も増えることになることです。
WEB広告を見る人が増えれば、広告を出したいという企業も増え、売上も増え、利益も確保することができるわけです。

安くても、下手したら無料でも、一定のシェアをとるという戦略はとても大事となります。

しかし、この戦略は初期費用が膨大にかかるケースが圧倒的に多く、中小企業はなかなか実践できていません。
スタートアップやベンチャー企業などと呼ばれる会社が、事業の価値を投資家に伝え、シェアが取れるまで大赤字を出しながらも投資家の出資に支えられ実行しているケースはありますが、通常の上場やバイアウトを狙わない中小企業にはハードルが高い戦略ではあります。
(有名なところでは、クックパッドやメルカリなどがこの方法で成功しています)

日本中のシェアを獲得するというような方法はなかなか中小企業には難しいですが、上記の方法にもヒントはあります。

第一人者になるという方法です。
ランチェスター戦略にヒントがありますが、一定の地域ではシェアを獲得する、とか、一定の業種のシェアを獲得するとかです。
そのためのフロントエンドを作り地域や業種でシェアを獲得し、知名度が高くなれば、苦労せずにお客様が向こうから訪ねてきてくれるようになるはずです。

バックエンドはメイン事業でなくても良い!

フロントエンド、バックエンドの説明をすると多くの経営者の方が、自社の主力商品やサービスをバックエンドにしたがるのですが、もう一度Googleの事例を見てみましょう。

Googleは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」というのが使命であり、そのための検索エンジンの構築がメインのはずです。
しかし、バックエンドであり、収益の柱なのは広告事業です。
全くもって検索システム自体を販売しようとしたり、検索精度があがるアップグレードを月額課金制にしたりしようとせず、「世界の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」という箇所で売上を作ろうとしていないところが、非常に面白いところです。

もちろん、広告という収益の柱は検索エンジン利用者が増えなければ広告を出す人も増えず利益は出にくくなるので、密接には関係はしています。

これをヒントに、既存のお客様たちのお役に立つ、かつ、自分たちにとって利益がでるであろうバックエンド商品を見つけるというのも中小企業の戦略の1つです。
それを購入してくれるかたが5%でも10%でもいることで、自社の商品を更に安くしたり、より付加価値をつけたりすることも可能だからです。

ぜひ、フリー戦略の特徴と事例、中小企業での活用のためのヒント
や、情報商材に学ぶ集客・販売・マーケティングの基本の記事をお読みいただき、少しでも何かヒントになれば幸いです。

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編集後記

実はお手伝いしている会社の1つが競合になかなか勝てないでいます。
その理由は価格です。
その会社も価格をほぼ同様に安くすることも可能です。

しかし、価格を安くすれば、競合のもう一社も価格を安くし、更にこちらも安くするという負のスパイラルに陥ってしまうことは目に見えているので、価格以外の部分で競争に勝つ方法を考え実行するという方針に決めました。

そして、多種ある仕事の1つではありますが、その方法を考え実行していくというお手伝いが現在進行系で進んでいます。

なので、今回こんな内容の記事を書くことにしたわけです。

価格競争の負のスパイラルにハマると、今度は原価を安くしなけば、販売価格を安くできないという結論に辿りつきます。
販売戦略を値下げしか考えられない多くの企業は、原価を安くするのに、仕入れ業者に値下げを要求する、社員がやっていた仕事をアルバイトにさせる、社員に長時間労働を強いるなどして、原価を安くする方法しか思いつきません。

結果、ブラック企業が誕生…というのは半分冗談でも、品質は下がりお客様は不幸、頑張っているのに利益がでない、利益がでないから社員の給料もあげられない。
にも関わらず労働時間だけは増えていく・・・
なぜなら利益が少ないので、新しい社員を増やせないにも関わらず、同じ利益を出すためには前よりも多く販売しなければいけないから1人あたりの仕事の量は増えていく・・・etc
という不幸の連鎖を生みます。

ぜひ負の連鎖、不幸の連鎖に巻き込まれないためにも戦略やマーケティング、事例を学び実践していっていただけたらと思います。

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