代表者のつぶやき

民事再生法に関する集会に参加して改めて気づいた、企業経営に大事な2つのこと

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お久しぶりです。
Belink(ビリンク)の吉田和矢です。

先日、民事再生法の適用開始を受けた企業の説明会と、それに伴う別の会社の総会に代理人として参加してきました。
その時に「すぐ更新しよう!」と思っていたのですが、いつの間にかこんなタイミングになってしまいました・・・。

債権者集会に近い形でしたが、今回なぜ民事再生法の適用を受けるほど業績が悪化してしまっていたのか、非常に興味深いことに気付いたので、ブログにまとめておきます。

①法律を甘く見ている

今回の事例は法令の解釈が変更になったことに伴う、納税及び罰則金が発生したことによることが1つの要因だったようです。

法令変更ではなく、法令の解釈変更だったため、変更後のものだけでなく、変更以前の過去数年にかかる納税及び罰則金が発生したため資金繰りが一気に悪化したとのことです。

そもそも法律というのは解釈がありますが、解釈というのは、あくまでも解釈であり、裁判で1審と2審で判決が違うことがあるように、変わる可能性があるということを頭に入れておかなければなりません。

そして、この会社の説明では、税務署にも都度相談していたにも関わらず、理不尽な変更のためやむを得ずという説明でしたが、その変更前の解釈や税務署との相談履歴を残しておき、本当に理不尽だと思うのであれば、不服申し立てをして裁判で戦うべきかと思います。

なぜしなかったのか?という質問が総会でもありましたが、費用がかかるためという回答でした。
しかし、本当に理不尽な変更で民事再生を受けるくらい資金繰りが悪化するほどの罰則等があるのであれば、費用がかかろうが不服申し立てをすべきかと思います。
それをせずに、黙って支払をしているあたり、こちら側の法的根拠が薄かったのではないかと思っています。

この例は極端ではありますが、中小企業の経営においても、グレーゾーンだからと甘くみて法令を守っていないケース、自分で良く調べたり、知る努力をしたりしていないにも関わらず、同業他社がやっているから大丈夫という甘い観点で経営していないでしょうか?

例えば、残業代、働いている間は社員は未払残業代を請求することは滅多にありません。
しかし、辞めた後、もしくは辞める覚悟をした後であれば、労働基準監督署に駆け込んだり、最近ではユニオンに相談したりするケースが増えています。

この業種は、時間で成果がでるわけではないから同業も残業代を払っていないし、社員も納得しているはずだから大丈夫とか、もう何年も経営しているけど、そんなことになったことはないから大丈夫とか、タカをくくっていませんか?

そんなの何の根拠にもなりません。

少し前の消費者金融が、過払利息でどんどん経営危機に陥っていったように、今は大丈夫なことが将来大丈夫という保証には全くつながらないということを認識する必要があります。

ちなみに未払残業代は、仮に定時が8時間の会社で20万円の社員を1ヶ月20日で1時間残業してもらうだけで、以下のような残業代をさかのぼり請求されます。

20万÷20日÷8h=1,250円(=1時間当たりの単価)

1,250円×1.25=1,562円(=1時間あたりの残業単価)

20日×1h=20h(=1ヶ月あたりの残業時間)

1,562円×20h=31,240円(=1ヶ月あたりの未払残業代)

未払残業代は2年分遡って請求できるため、

31,240円×24ヶ月=749,760円(=1人分の2年分の未払残業代)

20人の会社でしたら、20人分ですから、

749,760円×20人=14,995,200円

つまり約1,500万の未払残業代が発生するリスクを抱えているということになるわけです。

実際には20万円以上の月給の社員も多いでしょうし、1h以上の残業もさせている場合も多いでしょから、1人あたりの未払残業代はもっと高くなるかもしれません。

ここまで覚悟してサービス残業を黙認している会社は良いでしょうが、法的根拠もなく、過去の実績、周りの同業がしてないからとか、うかつな理由で法令を守っていないケースが多いのではないでしょうか?

社員やスタッフの人生に責任を持っているにも関わらず、

「赤信号、みんなで渡れば怖くない!」

的な発想で経営している人が多いということを改めてわかりました。

だからこそ、私たちのような会社がお役に立てる余地があるのですが。

②掛け算のビジネスモデル作りを放棄している

経営においてビジネスモデルをどう作るかはものすごく大切です。
今回、民事再生法の適用を受けた企業及びそこに関連する企業のビジネスモデルは、会員制ビジネスにも関わらず、新規の会員獲得に莫大な広告費をかけて、その入会金で経営を回すという、ある意味自転車操業だったわけです。

スポーツクラブをイメージしてみて下さい。

安定した経営は、会員からの毎月の会費で、施設維持費や従業員のお給料、家賃などの固定的にかかる費用を賄うことです。

不安定な経営は、既存会員からの会費収入では、毎月の固定的にかかる費用を払いきれず、赤字で、新規会員からの登録料や入会金で赤字を埋めるやり方です。

つまり、新規会員の獲得が、会社の存続を決めることになるので、会員獲得のためにかかる広告宣伝等の費用を莫大に使い、たくさんの新規会員を獲得するという、そんな経営をしていました。

確かに、急成長を目指すのであれば、それもやり方の1つです。
しかし、一時的にはそうでも、掛け算の商売である会費収入で採算がとれる規模に将来的にしていくつもりがなければ、ずっと不安定な経営になってしまいます。

今回、民事再生法の適用を受けたことで、そんな財務的に不安定なとこに新規会員になろうなんて人はいいるわけがないので、新規会員による収入が見込めず、完全に経営が破たんしてしまったのです。

既存会員の会費をあげるか、固定的にかかる費用を削減するかしか、究極的には再建の方法はなくなったわけです。

前者は会員にかかる負担が増大になり、既存会員の退会を招きかねませんし、後者もサービスの質の低下につながる可能性がたかいので、やはり既存会員の退会を招くかもしれません。

これも、それもすべてはビジネスモデルを掛け算の商売を中心に考え安定させようとしていなかった、経営陣の責任ということです。

以上

総会では再建プランもいくつか出ていました。
事業再生案件として面白い事例ではあるので、今後どういった再建策をとり、どのように推移していくかを見守っていきたいと思います。

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