データの集計方法や集計時期にもよりますが、国税庁や中小企業庁などから事業の廃業率なるものが発表されています。
大雑把に、「起業して1年後の廃業率は約40%、3年後60%、5年後80%、10年後95%」という数字を個人的には1つの目安として考えています。
なぜ廃業率が高いのか?先日ある本を読んでいて今までとは違った切り口の考えがあったので、整理するためにブログに書いてみました。
ビジネスはコイン投げのようなもの?!
ある本というのは、Dale Dauten氏の書かれた仕事は楽しいかね?という本です。
有名な本ですが一度も読んだことがなかったので、KindleUnlimitedで無料で読めたので読んでみました。
実はどんな本か知らず・・・どんな仕事でもやりがいがある!!みたいな本かと思っていたのですが、全然違いました・・・。
本の感想はまた別の機会に書くとして、今回面白いなあと思った一節を紹介します。
「参加者は一千人。表が出れば勝ち、裏が出れば負けだ。そうして一千人の人々がコインを投げるとだいたい五百人が裏が出て負ける。表が出た五百人は、もう一度コインを投げる。七回投げ終わると、コインを投げる人はちょうど八人になる」
(中略)
「このころには、コイン投げの達人たちの目を見張るような能力を一目見ようと見物人が集まってくる。そして、勝った人たちはお世辞に当惑させられる。彼らはコイン投げの天才だとほめたたえられるのである。生い立ちを書かれたり、急にアドバイスを求められるようになったり、といった具合に。いずれにせよ、参加者が一千人いても、たえず表を出し続けられるのは、わずか八人に過ぎない」
(中略)
「もちろん、きみはまず成功の前提条件を、すべてそろえなければならない。もし、頭が切れなかったり、勤勉でなかったりしたら、君は十回のうち十回とも失敗することになるだろう。だけど、もし適切なことをしっかりやったら、どうなると思う?十回中、失敗するのは九回になるんだよ」
(中略)
「問題は才能のあるなしでもなければ、勤勉かどうかってことでもない。
コイン投げの達人じゃないってことなんだ。」
この文章からいろいろ考えさせられました。
1000分の8の勝率のコイン投げに勝つ方法は?
ビジネスはコイン投げほど運の要素が強いわけではないという意見もあると思います。
が、冒頭に書いたように10年後に残っている事業はたったの5%という難易度です。
コイン投げに連続して7回勝つ確率はたったの0.8%ですが・・・
起業した経験がある人は恐らくわかる方が多いと思いますが、起業時に綿密に計画した事業計画は計画通りにいかず、思いつきではじめてみたことが、大きくても小さくても当たったことがあるのではないでしょうか?
この仕事は楽しいかね?という本では、コカコーラやチョコチップクッキー、リーバイスのジーパン、などを例にだして、それらの成功の秘訣は偶然であるとし、
必要は発明の母かもしれない。
だけど、偶然は発明の父なんだ。
と書いています。
例として、コカコーラの話しだけ載せておくと、
薬屋の社員が、頭が痛くもないのに、シロップ上の頭痛薬を水で割って飲んでいたのをある人がみて興味を持ち、ソーダを加えたらもっと美味しいのでは?と思い作って売りはじめたのがキッカケとのことです。
あの世界的な大ヒット飲料は、薬屋の社員がたまたま飲んでいたものという偶然から始まっているわけです。
これは世界的な大ヒット飲料を作ると目標を持ち、行動の計画を立て実行したとしても、大ヒットを生み出せていたかどうかは怪しいものです。
つまりコイン投げほどではないにしてもツキや運、タイミングを含めた偶然が大きな要素を占めているのがビジネスということです。
そこで本題に戻り、1000分の8のコイン投げに勝つ方法とは・・・
125回挑戦すること!!
です。
1000回で8回勝つなら、500回に4回、250回に2回、125回に1回は勝てるはずです。
勝てるまでやり続ける、それが一番簡単な方法ではないかと改めて思っています。
以前、創業期(スタートアップ期)の起業家は一勝九敗ではなく、一勝九十九敗を目指せの記事にも書きましたが、「致命的ではない失敗を高速で回転させること、そしてその失敗のスパリラルから早く抜け出すこと」が大事だと思います。(ちなみにこのあたりの話は、金持ち父さんの起業する前に読む本という本に書いてあります)
天才や頭が良い人であれば、考えたり勉強したりすれば、成功する方法が見えるのかもしれませんが、私のような凡人はまずやってみて失敗して実体験を積んだほうが有意義だと思いますし、実体験の多さはいつか武器になるはずです。
成功体験は後から作られた?
コイン投げに7回連続で成功したあたりから「コイン投げの天才などと言われ」という1文にもありますが、世の中には成功の法則みたいなものがありふれています。
しかし、それを読んで成功している人はほとんどいないと思います。
コイン投げに7回連続で成功した1000分の8の人に、コイン投げのコツを聞いたら、7回連続で成功させることができるか?
答えはできないですよね?
同じように事業で成功した人に話を聞いたり、書いた本を読んだりしても、成功後に今考えるとうまくいった理由はこうだっただろう的な話が多く出てきます。
原則と事例という話がありますが、
成功体験で多いのが事例の話。
専門家の話で多いのが原則の話。
事例は再現性がないケースが多くて問題です。
ちょっと毒舌になるかもしれませんが、たまに思うのは、たまたま成功した話を成功の秘訣のように語っている人や書いている人をみて、憂鬱になります。
一方で原則の話は、頭でっかちな話が多く、理屈はわかるけど現実できないでしょ・・・みたいなケースが多いようです。
なので、経営者からは嫌われがちで、実際に成功した人から教えてもらいたがる人が多いようです。
この当たり大事なのはバランスです。
スポーツの世界でも名選手が名監督になるわけではないというのとつながる話です。
ただ唯一言えることは経営の話は経営者から聞かなければいけないということです。
税理士に税務を相談するのは構いませんが、担当の一職員に経営の相談をしたところで、経営者の気持ちや立場など全くわかっていません。
コンサルタントも同じです。
集客コンサルタントに集客を相談するのは良いです。
しかし、経営全般の相談はしてはいけません。
唯一良いのは、税理士事務所の経営者、コンサルタント会社の経営者です。
あとは同業種、異業種問わず経営者です。(注意点は事例の話か原則の話なのかという点になりますが・・・)
話がかなり脱線しましたが、コイン投げの話に戻ると、
偶然コイン投げに7回勝ったにも関わらず、コイン投げのコツみたいなことをしたり顔で語る人が世の中にはたくさんいる
ということと、
コイン投げの勝ち方に関して言えば、事例と原則の違いは、
事例は、7回連続して勝った人から聞いた、「投げ方の工夫」であり、
原則は、「125回以上投げる」です。
マネーの虎に学ぶ?
けっこう昔になりますが、マネーの虎というテレビ番組がやっていました。
今30代以上の方は知っている人のほうが多いのではないかと思います。
過去の番組がYouTubeで見ることもできるようです。
番組としては起業したい人が事業プランを持ってプレゼンをし、虎といわれる経営者たちにお金を出資(または融資)してもらうことを目的としています。
この虎と呼ばれる経営者たちですが、当時は成功者と呼ばれ成功哲学などを語っていた人もいます。
しかし、現在でもその当時と同じかそれ以上のビジネス上の成功を納めている人というと数人になってしまいます。
それどころか、廃業していたり、借金の額が莫大になっていたりする人も少なくありません。
一度転落して再度浮かび上がっている人もいますが、未だ浮かび上がってこれない人もいます。
「マネーの虎 経営者のその後」などと調べればすぐネットでも見つかるので興味のある人は調べてみてください。
今では、当時事業プランを持ってプレゼンをし、虎たちにボロクソにけなされバカにされ、出資をしてもらうことができなかった人が虎の一部よりも成功しているケースもあるくらいです。
たまたまわかりやすい例だったのでマネーの虎の例を出しましたが、一時的に成功した虎でも失敗する可能性はいくらでもありますし、出資を受けられなかったという失敗をした志願者でも、成功する可能性はいくらでもあるということです。
そして虎くらいビジネス的に成功した人手も、どうしたら成功するか、誰が成功するかはわからないということです。
計画・目標は必要ない?
仕事は楽しいかね?では、目標や計画は不要ということを強く言っています。
それどころか、
今日の目標は明日のまんねり。
とまで書いており、その上で、
遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る
と書いてあります。
私は、仕事に関しては仕事柄もありますが目標や計画は必要派であり、どちらかというと目標を立てるから結果が出るという考え方の信者です。(プライベートに関してはかなり行き当たりばったりですが・・・)
事業における目標とは何なのか?や目標設定に必要な5つの要素などにも書きましたが、野球のイチロー選手、サッカーの本田選手、そしてソフトバンクの孫正義氏も活躍する前から目標を立て行動していました。
目標や計画が必要か必要じゃないかはよく論点になる話題です。
目標や計画でコーラが開発されたか?と言えばNOでしょうし、
昔流行った「たまごっち」もNOでしょう。
一方で、ソフトバンクがあそこまでの企業になったのは孫正義氏に目標と計画があったからで、なければあそこまでにはならなかったでしょう。
結果、今現在出した答えとしては、
「革新は目標や計画からは生まれない、しかし、事業には目標と計画は必要だ!」
になりました。
新商品や新サービスは偶然や遊び心の中から生まれるのでしょうから、目標や計画は必要ないのかもしれません。
しかし、事業には納期もありますし、維持するためには必要な売上というものがあります。
そのために必要な計画や目標は絶対的に必要だからです。
また、社員が夢を持つためにも会社がどういうビジョンをもっているのかを含めた目標と、それに現実性を持たせるための計画が必要だからです。
編集後記
話が脱線した部分もかなりありましたが、想像してた以上に考えさせられる良い本だったので、考えをまとめる意味も含めてブログを書いてみました。
廃業率のデータは、「周りを見てもそんなに廃業してないよ!」と思われる方も多いかも知れませんが、気になる方は算出方法や算出時期を確認する意味でも一度調べてみてください。
国税庁や中小企業庁からデータが出ているはずです。
そして最初に書いた
「なぜ廃業率が高いのか?」
に対する答えですが、
・失敗を恐れる傾向が強すぎる
・失敗したらやり直しづらい
・他人の目を気にしすぎる
失敗はいけないことだと教える教育の問題、連帯保証制度に代表される事業に失敗したらイチから再スタートではなくマイナススタートになるというやり直しづらい制度の問題、人と違ったことをして目立ちたくないという国民性の問題、などなどいろいろな要素があると思いますが、
ビジネス≒コイン投げ
だとすると、チャレンジする回数が大事なはずです。
そしてそれは、失敗を高速回転させろと書いたロバートキヨサキ氏の金持ち父さんの起業する前に読む本での証明されていますし、一勝九敗を書いたユニクロの柳井正氏も提唱しているところです。
創業期(スタートアップ期)の起業家は一勝九敗ではなく、一勝九十九敗を目指せを書いた2年前は、創業したばかりということもあり、複数の種まきをして、そのほとんどが失敗に終わってました。
しかしそのうちの芽がでた1つ、2つのことが今の事業の中心にあります。
この2年は出た芽を育てることに目がいってしまい、新しい種まきをほとんど出来ていませんでした。
仕事は楽しいかね?のコイン投げの部分を読んで、種まきして失敗する経験を増やさなければと改めて思ったので、また種まきをしていきます。
そして、目標や計画に関しては、革新は目標や計画から生まれないというのが新しい発見だったので、もう少し遊び心を持って仕事にも取り組んでいこうかなと思いました笑。
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